さよなら、もう一人のわたし
「そしたら千春にはこの話題は触れないほうがいいですね」
「君が触れる分には平気だと思うよ」
「どうして?」
「あいつさ、君が始めて来た日、自分が今まで出ていた映像を見ていたんだ。不思議そうな顔をしながらね。『どうしてあの子はこんな演技が好きなのか』って苦笑いを浮かべていた。今まで一度もそんなことなかったのにね」
「だってわたし、彼女のファンだったから」
彼は何かを納得したようだった。しかし、わたしには意味が分からない。
彼はわたしの表情に気づいたのか二度頷くと、言葉を続ける。
「嬉しかったんだと思うよ。あいつにとって過去は苦しみの対象だったけど、それをきちんと見ていてくれる人がいたっていうことが。損得勘定なしに純粋なあいつを、ね」
「だって、ずっとすごいなって思っていて。彼女だけが輝いて見えたから。端役でも、主役より輝いていて」
「そんな風に純粋にあいつ自身を見てやれる人はいなかったから。俺は引け目があって、あいつを庇ってやれなかったから」
仁科秋が千春だと分かってもその気持ちは変わらなかった。みんな千春ではなく、彼女の才能を見ていた、と言いたいのだろう。
「君が触れる分には平気だと思うよ」
「どうして?」
「あいつさ、君が始めて来た日、自分が今まで出ていた映像を見ていたんだ。不思議そうな顔をしながらね。『どうしてあの子はこんな演技が好きなのか』って苦笑いを浮かべていた。今まで一度もそんなことなかったのにね」
「だってわたし、彼女のファンだったから」
彼は何かを納得したようだった。しかし、わたしには意味が分からない。
彼はわたしの表情に気づいたのか二度頷くと、言葉を続ける。
「嬉しかったんだと思うよ。あいつにとって過去は苦しみの対象だったけど、それをきちんと見ていてくれる人がいたっていうことが。損得勘定なしに純粋なあいつを、ね」
「だって、ずっとすごいなって思っていて。彼女だけが輝いて見えたから。端役でも、主役より輝いていて」
「そんな風に純粋にあいつ自身を見てやれる人はいなかったから。俺は引け目があって、あいつを庇ってやれなかったから」
仁科秋が千春だと分かってもその気持ちは変わらなかった。みんな千春ではなく、彼女の才能を見ていた、と言いたいのだろう。