さよなら、もう一人のわたし
彼女が理系クラスに所属しているからそう思ったという単純なものだった。
「あ、そっちの夢?」
彼女はしまったと言いたそうな顔をした。彼女にとってお嫁さんが一番の夢がそれだったのだろうか。
「研究者とかなれたらいいよね。楽しそうだもん」
千春は無理に明るい声を出した。
なんとなくさっきの失態を隠そうとしているのではないかと思って笑ってしまった。
千春は頬を膨らませた。
「でも、わたしにとっては大問題なのよ。今まで誰も好きになったことないし。これからも好きになれるか分からないでしょう? 二十代の間に結婚したいから、あと十年で相手が見つかるかもわからないんだもん」
「素敵な夢だと思うよ。それにわたしも似たようなものだから」
千春の顔がもっと真っ赤になってしまった
素敵なといわれたのが意外にこたえたのかもしれない。
今まで好きな人ができたことはなかった。わたしはそこまで強い結婚願望はなかった。その辺りは千春と違って気楽なものなのかもしれない。