さよなら、もう一人のわたし
 その日は空が遠くまで見えそうなほど、綺麗な青空で、雲はあるものの、雨が降りそうな雰囲気は全くない。
 わたしは水色の膝丈のワンピースのすそに触れ、汗をぬぐった。
 今日もかなりの暑さだ。
 もう少しで水族館につく。本当に尚志さんは来てくれるのだろうか。

 そう思い、水族館の内部を仰ぎ見ると、憮然とした表情を浮かべている人の姿を見つけた。
 あんな強引にいくことになり、おこっているのだろうか。
 わたしは不安に思いながら、自分の影が彼の足に届く距離まで近づいたときに声をかけた。
 尚志さんの視線がわたしに投げかけられる。

「早いね」

 彼の強張っていた表情が穏やかになる。

「尚志さんも早いですね」

 今は待ち合わせの時間の十五分前だった。

「今日はごめんなさい」

 わたしは頭を下げる。

「俺もごめん。てっきり君は千春と一緒に行きたいのかなと気を使ったつもりだったんだ。俺と一緒に行っても楽しくないかなって思って」

「そんなことないです。すごく楽しみでしたから」
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