ラブ パラドックス
水切りラックに、洗って並べてある食器類が目に入った。伏せておいてある土鍋も。
よく見るとシンクもきれいだ。
わたしは片付けもせず寝てしまったので、夏目くんが片付けてくれたことは、聞かなくてもわかる。
「本気で昨日のお詫びしなきゃ、もうしわけなさすぎて気が済まない。ねえ、なにかない?」
「いいって。気にすんな」
「やだ。気にする」
「そうだな」と腕を組んだ夏目くんの二の腕の筋肉が、一層盛り上がって男らしさがたまらない。
「時々お前の料理食いたい」
「そんなのでいいの?わたしは一人で食べるより夏目くんと食べたほうが楽しいから、全然お詫びでも何でもないんだけど」
鼻先をさっと指で一撫でした夏目くんが、照れくさそうに笑う。