ラブ パラドックス
「セミナーまでもう少しだね」

「すげえ楽しみ」

「なんで?」

どうしてあんなものが楽しみなの?わたし、緊張しまくって、1週間くらい熟睡できなかったのに。

はいこれお願い。と、送付準備が整い封をする直前の封筒を手渡す。

誤送防止のため、郵送物は必ず誰かに中身を確認してもらうことになっている。


定型サイズの封筒から中身を取り出して、折り曲げた紙を広げながら「だってよ」と夏目くん。


「遺言について何かしら興味がある人たちに、ぜひ遺言を作成しましょうって促すわけだろ?市からの依頼を受けて」

「うん」

「セミナー後、絶妙なタイミングで無料相談会開くだろ?」

「そうだね」

「顧客大量獲得のチャンスが俺の手に委ねられてんだぞ?ワクワクするだろ」

「自信家だね。獲得できると思ってるからワクワクするんだよね」

「お前自信ねえの?俺らプロだろ?」


すごい自信。


”でも・だって・わたしなんか”

この3大ネガティブワードは、夏目氏には無縁なのだろうか。


好意、羨望、それから嫉妬。

同期を好きになると、気持ちがややこしい。
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