ラブ パラドックス
「細けえよな。俺も見習お」


帰り支度をしていた私は、夏目くんの言葉に手を止めた。

確認が終わったらしく、封筒に書類を折って入れながら、「これ」と封筒を振って見せた。


ん、なんだなんだ。

書類の内容は、認知症により判断能力が十分でない高齢の方の親族あての、成年後見制度利用に関する各種届け出書。

何が細かいんだろう。


「わかった。三つ折りが絶妙なことに気が付いた?絶対きっちりサイズ合わせて、折り目ビシ!に感心したんだ。コツ教えようか?」

「ちげえよ」

「じゃあなによ」

「記入例があるのに、鉛筆で薄っすら補足書き込んで、印鑑押すところにしるしつけてるところ」

「え、夏目くんしないの?」

「何のための記入例だよ。あと、送付書にいつも必ず手書きの一言添えるところ」

「それは…」


ご家族の命の次に大切なお金の管理を任されるんだから、顔が見えない分、せめてと思っていつも書いてる。

こんな紙切れで不安でしょう。でも私たちが責任をもって管理しますよという思いを込めて。


それとね。
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