ラブ パラドックス
「わたしの父が亡くなったこと話したよね」

「ああ、トイレで吐いた後、半泣きでな」

「それ言わないでよ!」


わりいわりい、と悪びれもなく笑う夏目くんに軽いパンチをくらわした。


「わたし当時未成年で、遺産相続の手続きできなかったでしょ?弁護士が特別代理人**になったの」

「ああ、そうだな」

「その弁護士がね、父親なくして途方に暮れてる小娘に、小難しい言葉ばかり並べるのよ。なに専門用語ばっかり使ってくれてんの。勘弁してよって思った記憶があるから、少しでもわかりやすくしたいなと」


私たちからしたら、何の疑問を持たない単語でも、一般の方々はきっと首をかしげるものばかりだと思う。

あの時のあの出来事が、夏目くんの言う”細かさ”につながってるんだと思う。


はっと目が合った夏目くんが、とても優しい目をしていたから。

ドキドキして、あの夜のことを思い出してしまって。

なるべく意識しないようにがんばってたのに。



一気に体温が上昇するのがわかる。




**特別代理人とは

未成年であっても、相続人となる権利は当然に持っているのですが、まだ大人と同じ判断力が備わってないと考えられます。相続における遺産分割協議は法律行為となります。そのため未成年は単独で行うことができないため、代理人が必要になります。
本作品のケースでは、凛子の母と凛子が法定相続人です。
親である母が代理人でいいのでは?と思うかもしれませんが、相続においては、親子であってもお互いの利害が対立するため、代理人になれません。
そこで、利害関係のない、特別代理人を選任する必要があります。
弁護士、司法書士、税理士等が選任されることが多いです。
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