ラブ パラドックス
やっべ、と呟き離れた夏目氏。待て待て、やばいって何が。


「飯食って帰ろうぜ」

「そうだね」

「なに食いたい?」

「ラーメン!とんこつの気分」

「お前あの店行ったことある?駅に向かう途中にある…」

「わかる!行ったことないけど気になってたんだよね」

「あそこうまいぞ」

「やった!ラーメン」


照明をすべて消した夏目くんが、私の前を歩く。エレベーターホールで、待ってる間目が合うと「なんだよこっち見んな」って、ヤンキーか。


「お洒落なイタリアンがいいとか、プチプラフレンチとか言わねえのな」

「言って欲しかった?ごめんね、ラーメン好きなんだもん」

「いや、今ではそういうところ、すげえお前らしいと思える」


そうか。仲良くなる前は、お金のかかる女だと思われてたんだっけ。


「それともうち来る?夏目くんのリクエスト料理作ろうか?あれから一度も作ってないよね」

「いや、もう遅いし、食って帰ろうぜ」


またか。

時々手料理を食べたいと言ってくれたのに、夏目くんは一度もイエスと言ってくれない。

何度か誘ったのに。


毎回毎回断られると、さすがに傷つく。
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