ラブ パラドックス
建物の外は驚くほど寒かった。マフラーで口元まで覆って、両手をポケットにつっこんだ。


「ねえ遠慮してる?でもわたし、あの日迷惑かけたこと本当に気になってて」

「遠慮じゃねえよ」

「じゃあなんで?」

「なんでもだよ」

「ほんとは美味しくなかった?水炊き、口に合わなかった?」

「違げえよ。水炊きも、次の日のハンバーグも、お前の作ってくれたもん全部美味かった」

ますますわかんない。と問い詰めようとして、ぐっと言葉を飲み込んだ。


灯りに照らされた夏目くんの頬が、赤かったから。


「お前んち行ったら危険なんだよ。特に夜。理由は聞くな。でもお前の手料理を食いたい気持ちはあるから。この件に関しては以上」

急に歩行の速度を上げる夏目くん。

立ち止まってしまったわたしは置いてきぼりだ。

ねえ夏目くん。それって、そういうことだよね?


「おい!早く行くぞ!」

立ち止まらず、振り返っただけの夏目くんを追いかける。

少しづつ大きくなる、夏目くんの背中。

いつかこんな風に、距離が縮まればいいのに。


夏目くん。好きだよ。

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