ラブ パラドックス
「店長!おつかれです。なるほど、そういうことか。これからデートですか」

わたしと湊さんを交互に見やり、大げさに何度も頷く中村くん。夏目くんの前でデートだなんて言わないで。


「先ほどはご来店ありがとうございました」

「いえ」

お互い小さく一礼した夏目くんと湊さん。にっこり、笑顔を添えて。


「凛子ちゃんと夏目さん、同期なんだっけ?」

「そうなんですよ。でも同期は二人きりらしいですよ」

「へえ…」

「店長知ってます?司法書士の合格率って、3%台らしいですよ。消費税より低いって、なんか凄くないですか?」


明らかに私に向けられた質問に答えたのは中村くん。湊さんは「へえ、すごいね」と、素直に感想を述べた。

中村くんは、以前湊さんを”数字の鬼”と呼んだけど、いつも優しいから全然想像できない。

< 120 / 294 >

この作品をシェア

pagetop