ラブ パラドックス
「俺今から陽と飯行くんですけど、店長たちも一緒に行きません?」
一瞬。湊さんが私を見た。少し考えるそぶりをして「ね?行きましょうよ」と尚誘ってくれる中村くんに対して、首を左右に振った。
「せっかくだけど、凛子ちゃんと二人きりがいいから、ごめん」
「ですよね。うわ、マジか」
「中村、どっち」
「店長がイケメンすぎてヤバい。クソかっけえ」
「言ってろ」
余裕の笑みを浮かべる湊さんとは対照的に、激しく照れる中村くんと、わたし。
そんな、二人きりがいいとか。そんな。
「じゃ、そういうことだから」
凛子ちゃん行こう。と湊さんの手が背中に添えられる。
「中村くんまたね。夏目くんはまた明日」
「葉月さんまた!店長お疲れ様でした!」
元気な中村くんの隣で、夏目くんは無言だ。じゃあねと手を振っても、リアクションが何も返ってこない。
わたしは、夏目くんと美優さんが、私が思ってる以上に親密だと知って落ち込んだ。
でも目の前の夏目くんは、わたしと湊さんを見てもノーリアクションだ。