ラブ パラドックス
エンジンをかけたままの車内は、スマホとペアリングしたカーナビから、冬にぴったりの邦楽が絶えず流れている。


「明日はイブって日に、明日彼氏にサプライズでスーツを送りたいんです。詳しいサイズ知らないんだけどどうにかして。って来られたり、いろいろあるよ」

「そうなの?シャツでも難しいよね」

「うん。で、クリスマス後は客足はぱったりだけどセール準備でばったばた。凛子ちゃんは?」

「来週はビッグイベントのセミナーでしょ。それ終わると、2週間無料相談会開いて25が仕事納め。お正月休み長いでしょ」

「25がラスト?死ぬほどうらやましい」

湊さんはうなだれ、ハンドルに突っ伏せた。


うらやましいでしょ。と冗談交じりに頭をかき混ぜると、湊さんは突然顔を上げ、ギュ、手を掴まれた。

そのまま指を絡められ、あっという間に手と手が密着した。
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