ラブ パラドックス
「飲みすぎて吐いちゃって、夏目くんのニット汚してしまって…」

「うん」

「それを夏目くんに汚れ落とさせて、服がなくて帰れなくなった夏目くん放置して、爆睡しちゃって…」

「そうなの?」

「えっ?そんなに驚く?」

「ごめん、声大きくなったね。俺てっきり…」

「てっきり?」

「二人はその、関係を持ったのかと」

「ないない!」


自由なほうの手を、ないないと全力で振る。まずい、顔が熱い。よかった。と安堵の表情を浮かべる湊さんが「顔が赤いよ」と頬を指で撫でた。


「部屋に帰ったら夏目さんに連絡するの?」

「うん。仕事の用事だって言うから」

「絶対違うよね」

「えっ?」

「抱きしめていい?」

「え!」

「いつも別れ際に、別れたくない気持ちが前面に出て抱きしめてしまうんだけど、今日は事前に許可取りしとこうかと」

気持ちのいい笑顔で、そんなことをサラリと言ってのける。さすが大人。


でもね。

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