ラブ パラドックス
冷え切った部屋に入り、急いで暖房器具のスイッチを入れた。まだ動悸が治まらない。
いつも穏やかで優しい湊さんの、言うなって言った時のあの口調。嫌いじゃないギャップに驚いて、今もまだドキドキと心臓が鳴りやまない。
人に好きになってもらえるって、どうしてこんなに嬉しいんだろう。
浴槽にお湯を張りながら、同時進行で家事をやっつける。頭の中はぐちゃぐちゃで、思うように作業がはかどらない。
湊さんはああ言ったけど、やっぱりもう会わないほうがいいのかな。でも彼氏ができたわけじゃないし、別に、そこまで考えることじゃない気もする。
そうだ電話しなきゃ。
4回目のコールで聞こえた夏目くんの声。耳に触れた携帯から届いた「はい」って、たったそれだけで胸がときめく。
「お疲れさま」
『いや、遅くね?』
「へ?」
『今何時だよ』
「ごめん、うちの時計今電池切れてて、スマホみるからちょっと待って」
『そういう意味じゃねえ』
なんなんだ。