ラブ パラドックス
夏目くんの表情が曇る。


「どうする?まわり道して駅行く?」

「いや。終わらせる」


私たちに気付いた美優さんが、ぱっと笑顔になり、駆け寄ってくる。丸い目を嬉しそうに細め、夏目くんの前に立った。

「お疲れ様です」と、寒さで細い美優さんの声。


「俺昨日言ったよな。こういうのもうやめてくれって」

夏目くんは表情を変えることなく、ぴしゃりと言い切った。

美優さんの笑顔がわずかに崩れる。


「迷惑なんだ。今後今までのように電話をかけてくるなら拒否する。メッセージもブロックする。また待ち伏せたら、弁護士と警察に相談したうえで、しかるべき措置をとる」

「そんな、わたしは普通に、」

「普通じゃないよな。あんた一日何回俺に連絡してくる?」

「だって、返してくれないから。電話にもなかなか出てくれないし…」

「気づけよ。変に期待させたらいけないから、返信しなかったんだ。できれば今みたいにきついことも言いたくなかった」


俯く美優さん。

部外者の私は、二人から少し距離をとった。
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