ラブ パラドックス
「本番直前だっていうのに、落ち着いてるよね。緊張してないでしょ」
「完璧に準備してきたんだ。緊張するわけねえだろ」
「左様でございますか」
「まあでも、昂ぶってはいる」
「がんばって。わたしもフォローする」
「ああ」
「そろそろお時間です」と会場の担当者に促され、舞台袖にはける。
程なくして出入り口が解放され、みるみる客席が埋まっていく。
夏目くんの笑顔が消え、顔つきが変わる。
がんばって。
隣にいるから。