ラブ パラドックス
「一刻を争うということではないんだけど、年が明けたらお願いすると思うから、そのつもりで」

「「はい」」


その後、年末のあいさつを交わし、前田先生だけが先に退室された。


「お前大丈夫か?」

「なにが?」

前田先生に続いて部屋を出ようとしていたのに、夏目くんの手が後ろから伸びてきてドアを閉めた。な、なんの真似よ。


「なにがじゃねえよ。さっきの遺言の話。死亡危急だぜ?」

「もしかして私の精神面の心配してくれてる?」

「そりゃそうだろ」

「夏目さん、優しすぎます」

「バカにしてんのか」

「してません」


だって。日が明るいうちは、ふざけた言い方じゃなきゃ言えないんだよ。


「大丈夫だよ。臨終に立ち会うわけじゃないし」

「それならいいんだ」


じゃあ。とドアを開けた私と、再びそれを閉める夏目氏。


「なによ」

「なんでもねえよ」


ドアの前で、向き合って軽いにらみ合い。

なんだこれ。
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