ラブ パラドックス
両者譲らぬ目線が、バチバチと火花を飛ば…さない。同じタイミングで、ふっと吹き出した。


「なんでもねえけど、言いたいことはある。一つ、いや二つ」

「聞こうじゃない」


ドアは手で押さえられたまま。ちょっと手を伸ばせば簡単に触れられる。さらさらの頬や、ワックスで整えられた髪に。

お前さ、と夏目くんの表情から笑みが消えた。私はそれを上目で伺う。


「さっきのマジで無理すんなよ。仕事だからって思ってんだろうが、割り切れるほど簡単じゃないだろ」

「わかった。正直言うと不安。明日から実家帰るから余計いろいろ思い出して、考えてしまうかもしれないなって思った。無理そうだったら、休み明けすぐ前田先生に言う」

「どうした、素直じゃねえか」

「わたしが素直じゃない時があった?」

「面白いこと言うなお前」


だって、夏目くんの助言は素直に受け入れたいじゃない。

恥ずかしいところを何度も見られて、その都度助けられて、好きが増して。こんな私でも、好きな人の前では最大限かわいくなりたい。


夏目くんは、わたしのこと、どう思ってるかわからないけど。
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