ラブ パラドックス
「お前ってうまそうに食うよな」

「そう?普段もやしと豆腐ばっかり食べてるからかな」

「マジか。ダイエット?お前それ以上どこの肉落とすんだよ」

「脱がなきゃわかんないところ?」

「聞くな。知るか」

「ただの節約。女子はあれこれお金がかかるから。貯金もしたいし。ところでわたし先週末合コン行ったんだ」


と話題を変えてみる。節約話をこれ以上掘り下げられたら困る。

「はずれだった。あの占い全然当たってないよね。あの日のどこがターニングポイントだったんだろ。行動したのにね」

「そういえば、あれから自分褒めてんの?」

「うん。褒めてる褒めてる。でもこれがまた難しいんだよね。毎日仕事頑張ったくらいしかなくて」

「なんでだよ。いくらでもあるだろ」


責めるでもなく、ただ、本当にわからないという表情で私を見る。

だって。と言ったきり黙る私に、夏目くんは笑顔を向けた。


「朝起きてすごい。朝飯食ってえらい。出勤してえらいとか、いくらでも褒めろよ」

「それって当たり前でしょ?そんなこと」

「当たり前を当たり前にできることも、じゅうぶん賞賛に値するだろ。何言ってんだよ」

目から鱗だ。夏目くんのポジティブは、生まれながらの才能だろうか。
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