ラブ パラドックス
言わずもがな、周りは笑顔でうっとりと肩を寄せ合う恋人ばかり。
手は繋いでポッケにインされたままだし、目の前のツリーは迫力あって綺麗だし。
あっちこっちに気が散ってしまう。
「寒い?」
「ん、寒いけど平気」
「あとで温かいもの飲もっか」
ツリーを見上げ、綺麗だねって微笑む湊さんのきれいな横顔。
胸に、鈍い痛みが襲う。
湊さん。
わたし、湊さんと会うのは、これで終わりにする。
わたしは湊さんと友人になりたい。でも、湊さんは違うよね。
ポケットの中、ギュとしっかり繋がれた手と手。湊さんの手は、暖かくて、大きくて、男っぽくて。
でも私が欲しい手は違うの。
湊さんと一緒にいると、楽しくてドキドキするけど、もう会えない。
「凛子ちゃん」
湊さんの表情から、さっきまでの笑みが消えた。
「凛子ちゃん」
もう一度繰り返される。
真剣な瞳から目が離せない。
喉の奥のほうが、ギュとなる。