ラブ パラドックス
***


本当に17時には先生方が全員退社してしまった。


夏目くんのことに有効な打開策を見いだせないまま、静かな部屋で、ふたりきり。

まるで、今朝と一緒だ。


カチンコチンにこわばった顔と身体の私と違い、隣の夏目くんは、余裕の表情で長い脚を見せつけるように組んで座っている。

目が合うと、プッと吹き出された。


「そんな神妙な顔すんなよ」

「してない」

「してんだよ。気持ち悪いだろ」

「気持ち悪いって酷くない?」


和やかな空気が一変、夏目くんの真剣な眼差しに、はっと息をのむ。


「あの日、なんで帰ったんだよ」


いきなり来た。


「次の日電話しようかなとも思ったんだけど、」

「なにお前、電話で済ませるつもりだったのかよ」

「そういうわけじゃ、」

「俺はそれが嫌で、休暇中、一度もお前に連絡しなかった。直接会ってきちんと話したかった」


どこかで引っかかっていた。というより、不安を増幅させていた。

なんで連絡してくれないんだろうって。

自分のことは棚に上げて。


男らしい夏目くんが、やっぱり好きで好きでどうしようもない。
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