ラブ パラドックス
***


「おじゃまします」


夏目くんの部屋は、築年数の浅い一般的なワンルームで、インテリアはブラックとネイビーで揃えられていて、物があまりない。

夏目くんのパーソナルな空間に、ドキドキワクワクする。


部屋に入るなり、きょろきょろするわたしを、家主が不思議そうに眺める。


「初めてじゃないだろ」

「前回の訪問は異常事態だったから、部屋を見る時間も余裕もなかったから」

「逃げ帰ったしな」


ぐ…

言葉に詰まるわたしを鼻で笑い、コートをクローゼットにしまった夏目くんが、わたしのコートも同じようにハンガーに掛け、しまってくれた。

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