ラブ パラドックス

「好き」


わあ!恥ずかしい!

口にしてすぐ夏目くんの腕の中で反転し、胸に頬を寄せる。


「こっち向けよ」

「やだ恥ずかしい」

「やだじゃねえよ」


呆れたような、楽しそうな笑い声が下りてきた。

上向くと、嬉しそうに笑っている夏目くんがいて、私もつられて笑顔になった。


首筋に優しく添えられた手。

くすぐったくて少し首をかしげると、笑顔のままの夏目くんが近づいてきた。


ギリギリまで見つめ合って、彼の目線が唇に落ちたとき、瞳を閉じた。


柔らかく重なる唇。


何度か繰り返し、ふと目を開けたとき、まつげを一本一本確認できる距離で目が合い、お互い、吹き出した。
< 199 / 294 >

この作品をシェア

pagetop