ラブ パラドックス
「アレの時にね、アレをやたら顔にかけたがりだったんだよね。そんな性癖ヤバくない?あれ気持ち悪いし、最悪」

「顔っ!」


急に立ち止まった夏目くんが手を離す。それはもう、勢いよく。突然の行動に対応できず止まり損ねた顔面が、夏目くんの背中に強打だ。ん、筋肉質。好きだなこの感触。

いたた…鼻をさすっていると、頬をピンク色に染めた夏目くんが振り返った。意外とウブか。

「お前なあ、がん…顔にとか、エグい下ネタ平気で口にすんな。女子だろ」

「女子だよ。私からすると夏目くんの赤面のほうが意外なんだけど」

「赤面もするわ!この酔っ払いが!」

ため息を吐き出した夏目くん。「帰るぞ」と再び手を引いてくれて、駅を目指す。


「夏目くんはあれでしょ。顔もスタイルもいいし、口もうまいから女子にもてるでしょ。あー、でも口はうまいけどそれ以上に悪いからなあ」

「お前なあ」

「彼女いないんだよね。ということは、セフレが数人いるとか?うわあ...うわあ...」

「怒るぞ」

「じゃ、1人だけ?」

「殴られたいか?そんなのいねえよ」

「へえ」


心底、へえ、だ。それがまた彼の怒りを買ったらしく、おい、と手を引っ張られ体が数十センチ前に泳いだ。
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