ラブ パラドックス
「葉月」

「ん、」


まだまだ色濃い余韻の中、夏目くんの腕に抱かれ、とろんと閉じた瞼に、唇がしっとり押し当てられた。

その唇が触れたまま動く。


「俺やばいわ」

「なにが?」

「なんでもねえよ」

「言ってよ。言ってくれなきゃわかんない」

「そうだった。お前そういうやつだった」


指で私の髪の毛を弄びながら、真面目な顔で言うもんだから、可笑しくてクスクスと笑ってしまう。

髪の毛をいじっていた指が止まった。大きな手に肩を抱かれ、その手に手を添える。


「やばいくらい、お前が好きだってこと」


照れ隠しからか、ぶっきらぼうな口調の夏目くん。そんな夏目くんらしいところも愛しくて、好きで好きで、どうしようもない。

好きな人からの「好き」は、こんなに幸せな気持ちになれるんだ。

こんなわたしでも、大好きな彼に、恥ずかしがらずに伝えたら、同じように幸せを感じてくれるかな。


「わたしも好き」


裸の胸に頬をすりよせ、甘えてみる。

過去の相手にはできなかった、素直に甘えるということ。


夏目くんにはできるし、したい。
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