ラブ パラドックス
ほらほらと、小物コーナーに連れていかれる。こりゃ私のセンスが問われるな。本気で選ぼうじゃない。


「ちょっとあっち行ってて」

「なんでだよ」

「選んでる姿見られたくない」

「は。意味わかんねえ」

「恥ずかしいから」

じっと睨むと、夏目くんは本気で首をかしげる。


「とにかく見ないで。私のお会計済ませといてね」

「いやおかしくね?」

「ばれたか」


おとなしく背中を向けてくれた夏目くん。夏目くんのネクタイは、いつもブルー系だ。


「これがいい」

「早っ。お前適当に決めんなよ」

「適当じゃないよ。全力で一目惚れ」


大量に置かれている中から選んだのは、ダークグレーがベースの、カラフルなマルチストライプのものだ。落ち着いていて、それでいてかっこよくて、かわいい。

夏目くんの首元にあてて、上部をキュっと握って三角を作る。うん。間違いない。

今着てる、ネイビーのチョークストライプのスーツとも合う。違和感ないし、おしゃれだ。

「似合ってる。かっこいい。見て?」


すぐ近くの、大きな鏡に映る夏目くんと鏡越しに目が合う。

「サンキュ。気に入った」


夏目くんと並ぶ、鏡の中の自分が喜色満面で、ちょっと驚いた。
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