ラブ パラドックス
「ちょ、そこは同調してくれよ」


涼平が大げさに頭を抱えてみせた。お前を巻き込んで悪かったな。


でもあの人がいたからこそ、葉月と恋人になることができた。それは間違いない。

葉月と一緒に仕事を始めてからどんどん惹かれていく一方で、気持ちに急ブレーキをかけ続けていた。

恋愛にうつつを抜かしてる場合じゃない。

俺にはすべきことがある。

一心不乱に仕事をして、学んで稼いで独立して、迷惑ばかりかけた家族に恩返しをしなければならないと、それだけを考えて働いていたからだ。

必死で葉月への気持ちを消そうとしていたが、人のものになってほしくなかった。

内面を知れば知るほど見た目とのギャップに心惹かれ、ブレーキは知らないうちに故障していた。

葉月への気持ちはどうあがいても消せないし、それより葉月が恋人でいてくれたら。

葉月をこの腕に抱きしめられたら。


一度そう思ってしまったら、もう歯止めが利かなかった。

その上、あの店長が葉月を誘い、二人で会っていると知り、嫉妬と不安でどうにかなりそうだった。
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