ラブ パラドックス

仕切り直してキスをすると、やっと応えてくれた。

ベッドの上でキスをする時、こんなふうに葉月が俺の首に腕を回してくるのが好きだ。

徐々に呼吸が荒くなり、あっという間に体が熱くなる。

思いのまま口づけながら、腕の中にいる葉月を想う。


互いが自然に名前を呼びあえるようになる頃には、俺のくだらない不安やコンプレックスは消えているだろうか。

その頃には、俺がお前を幸せにすると、胸を張って言えるだろうか。

女心は理解できなくても、お前の気持ちや考えを理解できるようになれたらそれでいい。

数少ない経験なんかあてにせずに、言葉と身体を使って愛情をしっかり伝えて、一緒に気持ちよくなれたらいい。


葉月が俺の沼から抜け出せなくなればいい。


「気持ちいい?」

「ん、気持ちいい。夏目くんは?」

「俺も。なあ、」

「なに?」


「凛子。好きだ」


ピクリ、とろんとしていた濡れた瞳が驚きで開かれた。


「わたしも好き」


重なり合う唇から、かわいい声が聞こえた。

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