ラブ パラドックス
「葉月さん聞いてない?陽が昔、水泳すごかったこと」

「聞いてない。そうなの?」

「100メートル自由形で、当時の高校新、出してんだぜ?」

「え!すごい!」

「俺当時の新聞記事のデータ、携帯に保存してるから見る?」

「見る見る!」

「見せんなよ」

「お前もうちょっと天狗になれよ。大学だって、スカウト合戦だっただろ。オリンピックだって…」


言いながら、中村くんは”永久保存!”とタイトルがつけられたフォルダを開く。

早く見たいけど、蜘蛛の巣状の亀裂が入った画面もすごい。


私の視線に気づいた夏目くんが、喧嘩の末、彼女に投げられた結果、ああなったことを教えてくれた。


「これこれ。うおっ」


突然の着信で、画面が切り替わる。

”沖田店長”と表示されていて、中村くんの表情が急変した。


「なんだろ、トラブったかな。悪い電話してくる」



「あいつ余計なことを…」


夏目くんは、席を立った中村くんの姿が見えなくなると、そう吐き出した。
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