ラブ パラドックス

葉月の幼馴染は30歳のはずだが随分若く見える。せいぜい2、3こ上にしか見えない。

美容に携わるから意識も高そうでさすがにいい男だ。

これで美容院10店舗も経営しているとなると、さぞもてるだろう。

でもきっと、ここまでの道のりは決して平たんではなかっただろう。並々ならぬ努力の結果、現在を手に入れたのだと思うと、シンプルにすごいと思う。

俺は栄光を手に入れられなかった人間だから。


「凛子、1分だけ彼氏と話しさせろよ」

「だめ」

「お前の彼氏に手なんか出さないから。な?」

「…1分だけ」


葉月がスマホを取り出しアラームをセットし始めるから、光さんと俺は笑う。

「こっち」と促され、バックヤードについていった。


スタッフルームで向かい合って椅子に座ると、幼馴染が口火を切った。

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