ラブ パラドックス
県内随一の繁華街であるアーケードは、金曜の夜ということもあって人通りが多い。

涼平の勤務先はここの近くだ。

いつだったか、涼平と飲んだ帰りに駅前で店長と会って以降、2度店に行った。いずれも凛子と一緒に行き、俺たちは仕事着を新調した。

店長とも顔を合わせた。

凛子と店長の間に、再会時には気まずさのような色が顔に現れていたが、次第にそれは消え、俺を存分に妬かせた。

二人がまだ連絡を取っているのかは知らない。

凛子が何も言ってこないから、俺からは聞かない。くだらない嫉妬で喧嘩をするのはもう二度と繰り返したくない。

そんなことより、凛子を信じる。そして凛子に好きでいてもらえる努力をする。


「まだ付き合う前に、この近くで占ってもらったことあっただろ?涼平から聞いたんだけど、あの占い師、オリンピックの延期を当てたって話題になってるらしいぞ」

「えーすご。ねえすぐ近くだよね。行ってみない?また占ってほしい」

「占い信じないって言ってたやつ誰だっけ?金もったいないとか、インチキって言ってただろ」

「なによ。陽だって、他人の言うことに左右されないとか、かっこつけてたくせに」


あの時のことがすぐ出てくるということは、こいつそこまで酔ってないな。


頬を膨らませ、腕を組んだまま至近距離で睨みつけてきた。

なんだそれ。ただかわいいだけじゃねえか。
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