ラブ パラドックス
「早速二人で新居探そうぜ」
「うん」
「お前の今住んでるところセキュリティがザルだから、一刻も早く引っ越しさせたい」
「えーでも好きにできたからわたしは好きなんだけどな」
「危ねえから普通に。とりあえず部屋はネットで探すとして、次の休みに指輪買いに行こう。プールも行こうぜ」
「うん、そうだね。来週の仕事の励みができた」
凛子が木陰から一歩足を踏み出し、照り付ける太陽に向かって両手を広げ、目を細めそれを見上げる。
右手の薬指を、反対の手の人差し指で指差し、嬉しそうに微笑んだ後、俺を見つめる。
「長生きしてね」
気のせいか?凛子の声が震えた気がした。
恐らくこれは、凛子の切なる願いだ。
「ああ。凛子もな」
俺は凛子の左手を取り、薬指に唇を落とした。