ラブ パラドックス
最寄り駅の改札を抜け、大きな柱に寄りかかっている陽の姿を見つけ駆け寄った。

姿を見ただけで、ああ、大好きだなって、無条件で胸が高鳴る。


もうお風呂に入ったようで、ゆったりした白の半そでTシャツに細身のスウェット。髪は洗いっぱなしで眉が隠れ、少し切れ長のアーモンド型の綺麗な目とのバランスが妙に幼く見えた。


「おかえり」

「ただいまっ」

「今日も酔ってるか?」

「酔ってないでーす」


「酔ってんじゃねえか」と呆れたように吐き捨てるけど、繋がれた手は優しくて温かい。

ぶっきらぼうな言い方でさえ愛しい。


「いつも迎えありがとね」

「お前が人様に迷惑かけたらまずいからな」

「陽と一緒じゃないときはちゃんと量控えてまーす」


だって。陽と初めてデートしたときのトイレ事件。あれ結構トラウマだもん。

いまだにネタにされるけど、もうそろそろ時効だよね。やめてくれないかな。
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