ラブ パラドックス
「最近小さい子供連れの家族見ると、無意識に俺と凛子に置き換えてんだよな」

「え、」

「知らず知らずにイメトレしてんだわ。ひいた?」

「え、ううん、そうじゃなくて」

「なんだよ。え、ばっかじゃねえか」

「だって私もしてるんだもん」


驚いた顔をした陽が、きゅ、と繋いだ手に力を込める。


「同棲してお前と毎日一緒にて、それでも満足しねえ」

「どういう意味?」

「独立して自分の事務所を持ってこそ一人前って思い込んでたけど、それは間違いだって気づいた。俺らの仕事ってひとつひとつの案件をこなして、顧客に満足してもらって、それの積み重ねだよな」

「そうだね」

「前田先生とかベテランの先生多いし、すげえ勉強になるだろ?待遇いいし、割と思い通り自由にさせてくれるし、居心地いいよな。大きな事務所だからいろんな案件に関われるし、独立したいって全然思わねえんだよな」

「それは私も思う。でも同棲して満足しないってなに?もうわたしのこと好きじゃなくなった?」

「は?」

「…体に飽きた?」


やばい泣く。わたし振られるの?

ほんの1分前は将来の話してたのに?
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