ラブ パラドックス
意外な展開に落ち着く間もなく、かっこいい車で現れた店長さんは、ひょいひょいと荷物をトランクに積んでくれた。


「腹減らない?よかったら食事しない?」

この後予定ないよね?時間大丈夫?と誘われたのは、ゆっくり走り始めた車が、最初の信号に引っかかった時だった。

これまた断る理由がなく。

お互い明日は仕事なので、アルコール抜きの食事という話になり、店長さんイチオシの洋食屋さんに連れてきてくれた。


店長さんは今年29歳。本部から毎月売り上げの厳しいノルマを課せられるけど、大手量販店に押されていて、苦戦続きらしい。


「司法書士ってどんな仕事なの?」

「ええっとですね。その質問をググったら、一番にヒットするのが裁判所に提出する書類の作成なんですけど、なんのこっちゃですよね」

「うんそうだね」

「私が今関わってるのは、遺言書の作成とか、成年後見と言って、認知症の方などの財産を管理する…とかです」

「難しいね。ね、そのピカタ一切れちょうだい」


向かいの席で、あ。と口を開ける店長さん。え、え、え、あーんですか。戸惑いつつ、お箸で掴んで口元に運ぶと、ぱくんとそれを食べた。

おまけに「これもうまいよ」と、エビフライをお返しに口に運んでくれる。


「おいしい!エビぷりぷり!」

「だよね」


って、カップルか!戸惑うわ!
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