ラブ パラドックス
「ええっとじゃあ、沖田店長?」
「え、マジか」
「冗談ですよ。沖田さんって呼びますね」
「俺、湊って言うんだけど」
湊と呼べと言わないあたり、わたしよりだいぶ年上なのに、かわいい人だな。中村くんが言ってた”売り上げの鬼”が、全然ピンとこない。
「湊さんでいいですか?」
「うん。でも敬語もいらない」
「おっけ」
「よろしい」
この人、すごくモテるだろうなあ。
食事に誘っていただいて、身に余る光栄です。
「デザートも食べる?」
「太る!けど食べる!ヤバ」
「凛子ちゃんおもしろいね」
湊さんにも見えるようにメニューを広げた。
食後にパンケーキは、食べたいけど食べすぎ。なんて、デザートのことしか考えてない私に対して。
湊さんの瞳を占領しているのが、そんな私の横顔だったなんて、知る由もなかった。