ラブ パラドックス



「今日はほんとにありがとうございました。食事までごちそうになっちゃって」

「いえいえ、俺が強引に誘ったからね」


バタン、バタン、車のドアを閉めた音が暗闇に響く。私の住むボロアパート脇の広場で降ろしてもらった。


「部屋まで運ぼうか?」

「いやいやいやいや、それは大丈夫」

「そんな全力で拒否らないでよ」

「さすがにそれは、図々しいから」

「警戒してる?」

「うん。それもある」

「うわ、正直」


湊さんがトランクを開けながら笑う。荷物を受け取るため、大きく開いたトランクへ駆け寄った。
< 34 / 294 >

この作品をシェア

pagetop