ラブ パラドックス
「今日はほんとにありがとうございました。食事までごちそうになっちゃって」
「いえいえ、俺が強引に誘ったからね」
バタン、バタン、車のドアを閉めた音が暗闇に響く。私の住むボロアパート脇の広場で降ろしてもらった。
「部屋まで運ぼうか?」
「いやいやいやいや、それは大丈夫」
「そんな全力で拒否らないでよ」
「さすがにそれは、図々しいから」
「警戒してる?」
「うん。それもある」
「うわ、正直」
湊さんがトランクを開けながら笑う。荷物を受け取るため、大きく開いたトランクへ駆け寄った。