ラブ　パラドックス
それにしても、今日は楽しかったしよく飲んだ。あとは一刻も早く家に帰って、お風呂に入って寝るだけだ。


今日は仕事終わりに、勤務先である”トラスト司法書士事務所”の、最年長の前田先生の還暦をお祝いした。

７人の司法書士が在籍している合同事務所に、大学を卒業したばかりの私と夏目くんが昨年度加わった。

司法書士事務所は個人開業がほとんどなので、司法書士９名の事務所は珍しい。市内の１等地に所在するビルのワンフロアに、事務所を構えている。


夏目くんとは二人きりの同期だけど、特別仲がいいということもなかった。ここ一か月だ。急激に親しくなったのは。

司法書士の仕事を大きく二分すると、ひとつが登記事業で、もう一つが相続・遺言、成年後見。


前田先生と私の二人で担当していた後者に、登記部門にいた夏目くんが加わったのだ。

ここ数年急激に拡大している業務で、とても二人でさばけなくなったからだ。


それと同じころ、今日の還暦祝いの幹事を二人仲良く押し付けられた。お店の下調べという名目で毎週末飲みに行き、お祝いの品を考えるうちに、結構お互い腹を割って話せるようになった。

お互いの居住が、偶然同じ沿線の隣の駅ということもあり、ローカルネタが通じて、終電後のタクシーの相乗りもできる貴重な人物だ。
< 4 / 294 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop