ラブ パラドックス
「よかったね。前田先生喜んでくれて」

「お前気づいた?先生最後、涙ぐんでたろ」

「だよね!あは。嬉しくて足取り軽い」

「は?お前は酔ってるだけだろ。ちょ、やめろ」

駅に近い商店街のアーケードに差し掛かったところで、スキップしようとして止められた。


「なんだあれ」


長蛇の列をなしている一角がある。向かいには、アコギをじゃかじゃかかき鳴らして歌っている、大学生風の男の子。

かわいそうに、みんな彼に背を向けて。誰も彼の熱唱を聞いてない。


「占い?」

行列の先にいたのは、黒ずくめの小柄なおばさんだった。小さな机に向かい合って座っている、若い女性に真剣に語りかけている。

女性もまた真剣に、何度も何度も大きくうなづいている。


「お前占ってもらえよ」

「え、やだ」

「彼氏欲しくて必死だろ?」

「違うって。やだやだ、ほんと遠慮しとく」


やだって言ってるのに強引に連れて行かれるから、こっちも懸命に抵抗する。手を振りほどこうと足掻いても、さすがメンズ。びくともしない。
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