ラブ パラドックス
「平気平気。さっきまで中村くんがいたんだよ。偶然会って」
「そうなんだ。俺の悪口言ってなかった?」
「売り上げの鬼とか?」
「鬼?あいつ、明日金棒で脅してやる」
「金棒!トゲトゲのやつ?」
「それそれ」
「わー、それはやめてあげて。かっこいいし信頼してるって言ってたよ。さすが湊店長、教育が行き届いてますね。プロ後輩教育」
「そんなの教育してないよ」
笑うと、白い息が混ざり合う。
「駅まで送る」
「いい、いいから。飲み会の時間大丈夫?」
「8時半に駅の近くの居酒屋だから、まだ平気」
湊さんが腕時計を見せてくれた。今8時過ぎで、駅までは5分少々。
うん。本当だ。
それならと、駅に向けて歩き出す。