ラブ パラドックス
湊さんとは今日まで、一回の食事と、一日に何往復かのメッセージのやり取りだけ。

『それだけ』なのか『それで十分』なのかわからないけど会話が弾む。駅までの5分があっという間だった。


「送ってくれてありがとう」

改札近くの柱の陰で立ちどまった。パスケースを取り出そうとバッグに手を差し入れると、湊さんの手がそれを遮った。


「まだ一緒にいたい」

「でも、」

「うん。わかってる。俺の方がもう行かなきゃいけないんだけど」

掌に伝わる湊さんのぬくもり。懇願されるような眼差しを向けられ、じっと目を見れない。ヤバいかわいい。

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