ラブ パラドックス
「あんなのインチキだって。お金使うのもったいない」

「ケチケチすんな。あんだけ並んでんだぜ。当たるんじゃね?」

「じゃあ夏目くんが占ってもらいなよ」

「俺はいい。他人の言うことに左右されねえ」

「私もだって!」


列の最後尾に並んで、声を荒げ文句を言う私に対して「しっ」と声を落とせと指示をする。くそ、この男、強引で勝手だ。


「お前占い信じねえの?」

「信じるわけないじゃん。興味ない」

「恋愛運も?」

「そっちより仕事運、金運に興味がある」

「興味あんじゃねえか」


こいつ!背中に平手をお見舞いしようと振りかぶり、簡単によけられた。勢い余ってふらついて、抱きとめられるという失態。

さすがに並んでからの会話は小声だ。酔っていてもそのくらいの配慮はできる。小声で会話をするため、夏目くんは体をかがめて顔を寄せている。

さっぱりと切りそろえられた黒髪。男らしいくせに、整った横顔が勝ち誇っていて、悔しくてそっぽをむいた。
< 6 / 294 >

この作品をシェア

pagetop