ラブ パラドックス
「凛子ちゃんそんなかわいいことしないでよ」

「あ、いやこれはその、子どものころ父親に頭撫でられたら嬉しくて元気が出たから、それで」

「ありがと。元気出た」


あっと思った時にはもう、抱き寄せられていて。


これはまた前回の別れ際と同じパターンでは。と冷静に振り返ることができたのは、家で褒め日記を書いてる途中で。

このときは、ただただドキドキして、動揺した。


「湊さん人が…」

「うん」

「う、うんって…」


わたしは湊さんの胸に顔をうずめていて、周りは見えない。でもここは、駅の改札前。

柱の影だけど、でも。

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