ラブ パラドックス
「とりあえずどこに置い…広っ、しかもなんだ、このシャレた感じは」

「でしょでしょ?」


両手に抱えた荷物を玄関に置いた夏目くん。室内を見回すその顔は、驚いて、好奇心にあふれている。

お邪魔しますと口早に言い、スニーカーを脱ぎ室内に入っていく。


「何畳?一人で住むのもったいないな」

「何畳だっけ?広いよね。隣の部屋は同棲カップル。ルームシェアしてる人もいるらしいよ」

「へえ」


きょろきょろと見回しながら、腕を組む夏目氏。リノベ賃貸で家賃は破格。電化であることを事前に話していたので、きっとその辺をいろいろ考えてるんだろうな。


「俺もここに住みたい」

「残念。あいにく満室御礼でございます」

「ちげえよ。今葉月とのルームシェアを申し出たんだよ」

「ばっ、ばっかじゃない?何言ってんの!」

「ばーか。冗談に決まってんだろ」

「ばかはどっちよ!」

「真っ赤な顔して怒んなよ。さ、どんどん運ぶぞ」


夏目くんはにやりと笑い、何食わぬ顔で玄関へ戻っていく。


最低!

人の気も知らないで!

わたし、夏目くんのこと好きかもしれないって思ってるんだから!


顔が赤いのは、怒ってるからじゃないんだバカ!
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