ラブ パラドックス
「ごめん、手握った」

「なんで謝んだよ」

「セクハラした。すまぬ」

「いやでも今ので感覚つかめたわ」


「こうだろ?」と、夏目くんは、楽しそうに、でも真剣に塗装してくれる。

手が触れたんだから、ちょっとは照れるとか、してくれてもいいのに。

わたしばっかり…


両端から二人が攻めていって、中間あたりで合流した。


「俺が塗る」

「いや私が」

「どうぞどうぞ」

「じゃあ」

「漫才かよ」


こんなくだらないやり取りでさえ楽しい。


「夏目くんにラストお願いしていい?お腹すいたでしょ。お鍋の準備する」

「おお頼む。こっちは俺に任せとけ」


もう20時が近い。つい作業に没頭してしまって、時間を忘れることもしばしばだ。

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