ラブ パラドックス
「ちゃちゃっと何品か作れて、女子力高いな」

「女子力じゃないって。ただ一人で生きていく上で、自然と身についただけ」

「お前女子力高いって言われてうれしくないのか?純粋に褒めたんだから、ここはありがとうでいいんじゃねえの?」

わたしって本当に進歩がない。全くその通り。言いたい。素直に。

「ま、そういうところが葉月らしさか」


にこり、柔らかい笑顔を向けられたもんだから動揺がすごい。出来上がった土鍋をコンロに移動させたいのに、うっかりぶちまけてしまいそう。


「あ、俺やる」

立ち上がり、キッチンのこっち側にきた夏目くんが私の横に立つ。

私の両手にはめた鍋掴みはすっぽり奪われ、蒸気が噴き出す土鍋の持ち手を掴み、コンロに置いてくれた。
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