ラブ パラドックス

「お前、酔ってる?」

「うふふ」

「うふふじゃねえよ。酔ってんな」


この胸の鼓動は、アルコールのせいだろうか。それとも。

視界に飛び込んできた夏目くんのアップ。下斜め45度から私をのぞき込む瞳は、妙に男っぽくて、ドキドキに耐え切れず、両目を覆い隠す。


「やんエッチ」

「おい。何の冗談だ」

グリグリと、夏目くんのこぶしがこめかみに押し当てられる。


「いたた、禿げる」

「禿げねえよ。たいして痛くねえだろ」


フヘヘと口元がだらしなく緩む。実は序盤からかなり気持ちよくて、今ではすっかり酔っぱらってる。

自宅で飲むと、酔いが回るのが格段に早い気がする。家に帰らないといけないとか、終電とか、気にしなくていいから気が緩む。

「でもお前酔いが顔に出ねえよな」

「そう?」


わ、わ。夏目くんの手の甲が、私の頬を、下から上へと滑る。
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