ラブ パラドックス
「触ったらお金取るよ」

「なんだそれ。赤くないけど熱くなってるか確認しただけ。むしろお前が金出せ」

「意味わかんない」

「俺も」

「夏目くんこそ酔ってるんじゃないの?」


ははっ、と声を上げ笑う夏目くんが、そうかもな。と小さく独言した。

今日の夏目くんは、よく食べてよく飲む。水炊きなんて、あっという間に鍋の底が見えた。

早めにしめのおじやの準備に取り掛かろう。


アクをとってから、顆粒のかつおだしと昆布だし、塩で味付けした出汁の中にご飯を入れ、少し煮込んでから卵でとじる。

青ネギを散らしてゴマ油で風味づけたおじやを、待ち切れずれんげでひとすくいして口に運んだ夏目くんが「うまい!」とうなった。

続けておじやをかきこむ姿を見ていると、心がほっこり温かくなる。


嬉しいなあ。普段少食だと思っていた夏目くんが、自分の料理をたくさん食べてくれる。

それも、こんなにおいしそうに。

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