僕の星
 佐久間進太は、北風が吹き抜ける歩道の隅に立っていた。春彦が声をかけると、俯かせていた顔を上げる。

「あっ」

 里奈を見ると小さく叫び、そのまま棒立ちになった。

 外灯に照らされた彼の顔は以前よりほっそりしたように感じられた。近付くと、長身をまっすぐに伸ばして里奈を見下ろす。相変わらず傲慢に見える態度だが、本人に他意がないのを、今の里奈は理解している。

「こ、こんばんは。久しぶりだね」

 進太はやや上擦った声で、里奈に挨拶した。

「こんばんは、進太君。ホントに久しぶり」

 里奈も挨拶を返すが、進太は再び口をつぐんでしまった。真っ暗な海から波の音だけが聞こえる。

「おい、どうした。感無量で何も言えないのか」

 春彦が横から茶化すと、進太はハッとした顔になり、

「さっ、寒いから口が上手く動かないのさ。その……やっぱりどこかに入ろう」
「そうだな。お前だって風邪でも引いたら仕事に差し障るだろうから」

 春彦は足踏みしながら周りを見渡す。ホテルの周囲には、これといった店は見当たらない。

「海岸通りの裏に小さな喫茶店があるって親父が言ってた。ちょっと行ってみるか」

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