僕の星
 店員がコーヒーを運んできた。
 モカブレンドの良い香りがする。里奈はミルクを入れて、スプーンでかき混ぜた。

「ブラックじゃないのか」

 進太が目を見開き、少しとがめる声で言った。

「うん。春彦に影響されちゃって、少し甘党になったんだ」
「……そうか」

 進太は残念そうにつぶやくと、自分のコーヒーには何も加えずに飲んだ。

「そういえば里奈、成人式はどうだったんだ。写真は撮ったんだろ?」

 春彦に思いついたように訊かれ、里奈はぎくりとする。

「撮ったけど。その、写りがちょっと……いまひとつで……」

 あの七五三のような写真を、春彦や、ファッションモデルの進太に見せるのは恥を晒すようなもの。できれば隠しておきたい。

「いいから見せてみろよ。なあ、佐久間も見たいよな」
「見たい」

 進太はしっかりと頷いた。

「うう……」

 里奈は渋々スマートフォンを取り出すと、アプリを開く。比較的ましに撮れている写真を選び、二人に見せた。

「ほお~」

 男2人は頭を寄せ合い、写真に見入っている。

「変でしょ、七五三みたいでしょ」

 里奈は自分からおちゃらけた。そのほうが傷付かないからだ。
 だけど、二人は笑わなかった。それどころか、しんみりとした顔つきになっている。


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